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翌21日はリキサという村でのお祭り。

朝出掛けようとしたら民泊先の家族に呼びとめられる。昨夜のソウルフラワーの演奏を、「彼(中川さん)が発する言葉が一つひとつ、僕の体に入ってきて、エネルギーが溢れた。魂のある唄だった。今の東ティモールにふさわしい、本当のお祝いだ」と熱を込めて語ってくれた。嬉しくて言葉が出ない。

住民の言葉に背中を押されてリキサへ向かう。大虐殺があった地で黙祷をし、会場へ。村の人たちは祭りの舞台と料理を手作りして歓迎してくれた。しかしいざ始めようとすると停電。メンバーを含め皆が数時間苦戦してやっと灯った電球に拍手がおこり、祭りが始まる。

地元の伝統音楽、バンド演奏の後ソウルフラワーが登場。葉っぱの屋根とはだか電球の舞台がよく似合う。予定の時間より3時間も出番が遅れ、決して充分とは言えない設備にも関わらず、ソウルフラワーメンバーは常に暖かい。さらに中川さんのMC、最初の言葉は「相当気分いいです」(!)

客席の子供たちは演奏が始まっても身じろぎ一つしない。凝視するその目には迫力があった。この地に生まれ、武力侵攻と同化政策を見てきた目。軽いノリが少しも見られない現地の反応は日本で見られる音楽との接し方とはかけ離れている。「反応が即物的、即興的でない分、心の中に深く入っている」と語る現地リーダーのアベリーノさん。

 

お昼ごはん!河村は歯痛(20日・コンサート会場近く)
デジカメを見て大喜びの子どもたち(21日・リキサ・撮影 広田保彦) 独立を祝って歌い踊る人たち(19日・ディリ)
独立を祝う人(19日・ディリ) 早起きして来てくれた子どもたち(21日・リキサ) ティモール社会党リキサ支部代表アベリーノさん(21日・リキサ)

一方、大人たちは舞台脇にいた私に、「聞け万国の労働者」「満月の夕」「インターナショナル」など、唄の訳を求めた。言葉一つひとつに神妙な面持ちでうなずき、音に耳を傾ける鋭い真剣さ。一人ひとりが「国」を想い、政府を注意深く観察し、必死 に良くしようとする、そんな熱気を感じながら、モノノケの音を改めて聴いた。

現地リーダーのアベリーノさんは、社会主義指導者でいながら、今までの制限された状況で情報が入らず、「インターナショナル」も聴いたことがなかったという。ライブ直後、どうにかしてソウルフラワーのCDを手に入れようとしていた彼に、中川さんからアルバム「ゴーストヒッツ95〜99」が贈られた。東ティモールの社会主義に「インターナショナル」が渡った歴史的瞬間。祭りに駆けつけた西パプアの指導者も中川さんの手を握って唄を絶賛した。ぬるいビールを片手に、貴重な出会いが続く。

子供たちと和気あいあい(21日・リキサ)
大活躍の通訳、柏木さんにCDをプレゼント(ディリ) たくさんのごちそうを用意してくれた
裸電球と竹のステージ(21日・リキサ)

いつまでも帰ろうとしない人々を残し、再会を約束して会場を後にする。トラックの荷台で風に吹かれながら、祭りの余韻で心があったかい。ソウルフラワーと東ティモールの出会い、強靭な土着文化に希望を感じずにはいられない。私にはそんな夜となった。

帰りの飛行機で隣になったのは、20日のコンサートを主催した組織のポルトガル人だった。優しい目をして東ティモールを語る彼の、現地住民とかけ離れた視点に、愕然とさせられる。ボランティアにも力を入れているという彼は、ポルトガル語が普及していない東ティモールを気の毒に思い活動を続けている。

「東ティモールとブラジルはともに元植民地として平等であるべきだ」。100%善意でそう話す彼に、東ティモール住民の気持ち、土着文化は伝わっていなかった。彼はまた、ブラジルのコルコバードのキリスト像を世界遺産にするため尽力している、と語った。先住民族の住む地に押し入って山のてっぺんに立った巨大なキリスト像が、東ティモールをとりまく大国の問題を象徴するように頭に浮かぶ。植民地を山の上から見降ろし、ふもとにある住民の文化から学ぶことを知らない視線が未だに存在することを、私は感じてしまう。21世紀、大国の犯罪とも言える行為の一方で、東ティモールは膨大な犠牲を払い、当然の権利を勝ち取った。自ら問題を生み出してそれに苦しむ現世界が、東ティモールのシンプルで強い信念に勇気づけられるよう願う。

参考
●『いつかロロサエの森で 東ティモール・ゼロからの出発』
南風島渉著 コモンズ ☆おすすめ☆
●『東ティモール 奪われた独立/自由への闘い』
『東ティモール2 「住民投票」後の状況と「正義」の行方』
高橋奈緒子、益岡賢、文殊幹夫 共著 明石書店
●ティモール・ロロサエ情報 
http://www.asahi-net.or.jp/~gc9n-tkhs/index.html

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撮影: 小幡文人(アーネスト)※ALTに注記ないもの全て /広田保彦


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