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中川敬
ピースボート交流会
date 2002/8/26-30
title ピースボート交流会
place 国後島ユージノクリリスク
レーニン広場
members 中川敬+山口洋
setlist

只今、セットリスト作成中です。
しばらくお待ち下さい。

中川敬+山口洋国後島ライブ(2002年8月)

文:石丸健作(ピースボート)

■無政府主義者の潮の路!?

 国際交流という名の民間外交をライフワークにしている僕たちは、 世界中の港でお祭りを演出する。その土地に暮らす人と、ピースボ ートの旅に参加した人との接点を起爆剤的に作り出すのがその役割 だ。言葉も文化も違う土地で通じるのは、その場で五感に届くもの だけ。ソウルフラワーを世界に連れ出したくなるのは、そんな理由 からだ。フィリピン、ベトナム、北朝鮮以来、4度目の起爆剤をお 届いした。ミッション名は「国後島二上陸セヨ」。
 出発の前日、一つの論文が産経新聞に掲載された。僕たちの上陸 予定を非難する論文だ。文中には「外務省の自粛要請を無視。無政 府主義者たちは帰国後パスポートを没収されて当然」とある。羽田 を出発した機内で中川氏に記事のコピーを見せると、「おめでとう、 無政府主義者やん」とのこと、隣ではスポーツ新聞の「おニヤン子再 結成」の記事に山口氏が愕然としている。
 合流した二人を乗せたピースボートは、予定通り国後島沖に停泊 した。これから艀−はしけ−(渡し船)を使っての上陸開始だ。艀の 名は「希望丸」、98年に北方四島交流事業のために日本政府から贈ら れたもので、落札に関しての一連がムネオ疑惑の渦中のひとつにな っている。音響機材を積み込み、希望丸にゆられること約20分。島 の人たちが歓迎の旗を揚げているのが見え始めた。今回訪れたのは、 北方四島の中で最も北海道に近い国後島、その中心地であるユージ ノクリリスク(古釜布)という街。人口は約6300人、街並みは「む っちゃロシア」だが、天気が良いときには知床の山並みが見え、島 の隅までいくとなんと日本の携帯電話が使えてしまうという島。も ちろん日本のテレビの電波は届いているということで、島の人たち は日本の番組も見ており、日本への関心はすごく高い。
 友好の家(通称ムネオハウス)の正面玄関を背にすると、真正面に は廃墟のような市庁舎があり、その前の広場が会場となるレーニン 広場だ。発電機を点火し、同行した山口洋マネージャーの堀田氏が てきばきと機材のセッティンクを始めた。寒い。八月というのにむち ゃくちゃ寒い。あまりの寒さに中川・山口両氏がムネオハウスで暖 をとろうとしたが、管理人のおばちゃんに追い返された。開始時刻 が近づくに連れ、近所の子どもたちが集まりだし、夕方の開始時に は1500人以上の島の人々、そしてピースボートの参加者が広場 に集まった。今回、中川・山口両氏とともに参加して頂いたのが、 アイヌの弦楽器「トンコリ」の奏者であるOKIさん。ロシアと日本 が入れ替わり占拠を始めるより昔、この島はアイヌの土地だった。 100年ぶりに島に響いたOKIさんの演奏に、二人とも静かに聞 き入っていた。
 島民の出し物と織り交ぜる形で、中川・山口のライヴは始まった。 二人の歌声が国後の空に高く高く書いた。感動。<満月のタ一国後バ ージョンー>。古びて置き去りにされたレーニン像をバックに演奏す る二人を、島の人たちが取り巻いている。しかしOKIさん以外に アイヌの姿はここにはない。旧島民の姿もここにはない。国家の間 で取り引きされた挙げ句、ほったらかしになっている島の今と昔が 一気に空に向かって吹き出していく、そんな<満月>だった。
 島を去る間際、小さな女の子から「楽しかったよ、次はいつ来る?」 と尋ねられた。島を訪れたはとんとの人たちは「また必ずくるよ」と 約束をしてきたと後に聞いて、嬉しくなった。「それはオタクとウチ の政府しだいやね」とは誰も答えない。人を人として感じるという のは、こういうことを言うんだろう。何故か僕はまわりにいた島の 人たちに、意味なくソウルフラワーのニューアルバムのチラシを配 ってしまった。今、国後では一番有名な日本のミュージシャンにな っているかもしれない。
 拉致事件発覚後の日本の社会に象徴されるように、僕たちは「国 家」と「人間」の区別がつかない慣習の中で暮らしている。「国家の 行為」を「その国の人々の行為」ととらえ、「国家の考え」を「人間の 考え」としている。国家は大事、だから選挙に行こう。しかしそれ は方法として必要なのであって、人間=国家ではない。実体験を伴 わず、想像で海を越えるとその大事な区別がつかなくなってくる。 その結果、国家に全てを依存する弱い集団となって60年前にタイム スリップする。ちなみに記しておくと、今回の訪問は「独自のビザ 無し訪問」であって、国際法も国内法も害さない。ロシアビザの発 給も受けず、パスポートも不携帯で上陸した。日本政府を介さず直 接交渉した結果だ。法的に問題がない行為に対して、国家が「待っ た」をかけることに疑問をもたない人には、是非一度国後を訪れる ことをすすめたい。そこには僕たちの税金で建てられた総工費4億 円のプレハブと、22億円の動かない発電所、そして「とっちでもい いからこの暮らしをなんとかしてくれ」という島民の、「待てと言わ れて待つこと50年」という旧島民の心の声がある。
 もし想像ではないリアルな海を越えるとき、そして起爆剤が必要 なとき、そんなとき、僕たちにはソウルフラワー&山口洋がついて いる。これからもどうぞ宜しくお願いします。
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