1. | うたは自由をめざす! ALL SONGS GO FORWARD TO FREEDOM! |
2. | スイングゲリラ宣言 SWING-GUERRILLA DECLARATION |
3. | そら(この空はあの空につながっている) SORA (THIS SKY IS LINKED WITH THAT SKY) |
4. | リキサからの贈り物 A GIFT FROM LIQUICA (EAST TIMOR) |
5. | バンクロバー〜ビッグ・アップル〜杓子定木 (インスト)〜戦火のかなた BANKROBBER〜BIG APPLE〜THE FORMALISTS' BLUE (INST.)〜BEYOND THE FLAMES |
6. | ムーンダンス (インスト)〜ロンドン・デリー MOONDANCE (INST.)〜LONDON DERRY |
7. | 進軍ラッパ・エレジー (インスト)〜平和に生きる権利 SHINGUN RAPPA ELEGY (INST.)〜THE RIGHT TO LIVE IN PEACE |
8. | 続・うたは自由をめざす! ALL SONGS GO FORWARD TO FREEDOM! (REPRISE) |
![]() |
|
M-5〜7・・・Live Recordings |
このアルバムを世界中の平和を希求する魂の連帯に捧げる。
スタジオ・レコーディングによる5曲の新曲に加え、3曲のライヴ・メドレーを含む8トラック全13曲
『シャローム・サラーム』。
SHALOMはヘブライ語、SALAAMはアラビア語で、それぞれ「平和」を意味する言葉だ。ソウル・フラワー・ユニオンは1993年の結成以来、一貫して音楽を通じて非戦を訴えてきた。しかし今回の内容はタイトルからも窺えるように、かつてなかったほどに諧謔的なレトリックを廃し、鮮明にストレートにメッセージを伝えるものになっている。
いついつまでも愛される音楽を作りたい。ミュージシャンがそんな欲望を抱くのは、ごく当たり前のことだろう。しかし「今だからこそ」放たれねばならぬ想いもそれに劣らず重要だ。いやむしろ生身の人間が生臭さを抱えたまま、時空を超えた説得力のある作品を生み出すためには、今生きているこの瞬間に対し、ズバッと開かれていなければならないのではないか?
日毎にきな臭さを増してきた今のご時世では、にわか軍事評論家じみた小賢しいもの言いで天下国家談義に淫することはたやすい。だがだからこそ、今回の彼らはいてもたってもいられずに、あえてベタに「平和」「非戦」を訴えているのだ。彼らの態度は、戦闘的なまでにきっぱりとしている。仮に今のあなたがどんなに浮かれていようと、あるいはどんなに鬱々とした心境であろうと、本作の音と言葉には、聴く者を踊るアホへと変えずにおかないだろう。本作に獰猛なまでに満ちあふれている「生きる悦び「快楽」こそが、「平和」「非戦」への原動力なのだ。
もちろんその「快楽」とは、歴史の歪みの上にあぐらをかいた独善的で排他的な「快楽」ではない。歴史の歪みを解きほぐせずにはいられない欲望、未来への希望と一体になったオープンな「快楽」である。
これまでも在日コリアン、沖縄、アイヌ、アイリッシュとの出会いをサウンドに刻み込んできたソウル・フラワーの姿勢には、かつての宗主国イギリスに生まれ、ジャマイカ系移民との連携を通じてレゲエに接近していったクラッシュのジョー・ストラマーと通じるものがあったが、本作のレゲエ・メドレーには、まさにジョーの発想を受け継ぎ、発展させていこうという意志が込められている。
ちなみにそのメドレーのしょっぱなの<バンクロバー>は、昨年夏に朝霧で邂逅を果たしたソウル・フラワーに、あたかもバトンを託すかのように急逝してしまったジョーへの追悼の想いを込めたクラッシュのカヴァーである。
ビートルズに代表される英米中心の音楽への愛情を持ちつつ、イラク、パレスチナ、アイルランド、東ティモール、ジャマイカ、朝鮮半島といった諸々の辺境の現場で、平和を希求する魂への連帯を音楽で表明するソウル・フラワーは、歴史の歪みを音楽で解きほぐすR&R整体師だ。最近どうも歴史の凝りに悩まされているあなたへ、「戦闘的」にお薦めしたい一枚である。
(志田 歩)