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海にすわる <沖縄・辺野古 反基地600日の闘い>
  (2006年 日本)
  監督: 琉球朝日放送 QAB
  英題: SIT-IN ON THE SEA(THE 600 DAYS ANTI-BASE STRUGGLE IN OKINAWA HENOKO)
  主要舞台: 沖縄
   

  「あの沖縄戦がおわったとき、山はやけ、里もやけ、ぶたも、牛も、馬も、陸のものはすべて焼かれた。食べるものと言えば、海からの恵みだったはずだ。その海への恩がえしは、海を壊すことではないはずだ」(山城善勝/辺野古の単管ヤグラに結わえられた詩より)

  本ドキュメンタリーは、琉球朝日放送が報道特別番組として制作し、2006年3月25日にテレビ放送されたもの。よって、多くの要望による再放送でもない限り中々お目にかかることの出来ない映像作品なのだが、沖縄・辺野古の基地建設ボーリング調査の600日に及ぶ海上阻止行動をつぶさに伝えてくれる実に貴重な記録映像なので、ここに紹介したい(※)。

  日本全国の米軍施設の75%が集中し、県の面積の11%、空の40%を米軍に奪われ、「沖縄の中に基地があるのではない。基地の中に沖縄がある」という言い回しすら可能な沖縄。本作冒頭にも映し出される「美しい海」に代表される沖縄のイメージの背後に厳然と聳え立つ戦争の影は、「沖縄戦」や「占領」に象徴される悲痛な過去へのみ追いやれるものではない(『風音』の項参照)。
  1995年9月4日の米兵少女暴行事件以降、沖縄の反基地闘争の大きなうねりが反安保運動へと発展することに危惧を抱いた日米両政府は、1996年12月、住宅密集地にあり世界でも最も危険だと言われる普天間基地の全面返還を決定、その軍事施設を沖縄東海岸沖(名護市辺野古)へと移設する代替案を発表した。
  1997年12月、名護市の住民投票で基地反対派が勝利するも、比嘉名護市長(当時)が基地受け入れと市長辞職を表明。1999年11月には、稲嶺沖縄県知事(当時)が普天間基地の移設先に辺野古沿岸域を表明し、12月に岸本名護市長(当時)が条件付きで受け入れを表明するに至り、新基地建設反対闘争も予断を許さない状況になっていた。
  「命を守る会」のオバー・オジーらによる反基地闘争も七年を迎えた2004年4月、住民との約束であった説明会も開催されないまま、県が基地建設のためのボーリング調査に同意。そしていよいよ4月19日午前5時、ボーリング調査に取りかかるべく、那覇防衛施設局員が作業員とともに辺野古の浜へ。その翌日から漁港前での座り込み、ボーリング調査阻止行動が始まるのであった(『Marines Go Home 辺野古・梅香里・矢臼別』の項参照)。
  同年8月13日、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落するも、日本政府は、事故をいいことに、普天間基地の危険性から早急な辺野古への基地移設を訴える始末。遂に9月9日、那覇防衛施設局の作業強行により、海上での阻止行動が始まるのであった。とはいえ、十代から七十代にわたる阻止行動参加者は、カヌーもダイビングもまったくのシロウト集団。完全非暴力の海上座り込みは、実に危険で激しい苛酷な攻防戦なのだ。
  映像は、オバー・オジーらに説得されて目に涙をためるウチナーンチュの防衛施設局員、作業員に突き落とされて怪我をする阻止行動参加者、賛成派の辺野古漁民、海上阻止行動に急遽駆けつけてきた海人、横断幕とともに海底座り込みをするダイバー、などなど、苛酷な二十四時間の阻止行動の悲喜こもごもを映し出してゆく。
  「彼らは暴力的・権力的に進めるかもしれないけど、私達は力のないものが弱さを武器にしてどういう闘いが出来るか考えようと。ここに基地が作られたら沖縄は死ぬって思っている。私が問われると思う。私達ではなく私。一人ひとりがその歴史の中で何をしていたか。そんな気持ち」(平良悦美)
  そして遂に2005年9月2日、那覇防衛施設局は単管ヤグラを撤去、海上阻止行動が見事勝利するのであった。しかし、勝利に沸き立つ市民の頭越しに、日米両政府は米軍再編計画・辺野古「沿岸案」を発表。場所を少し移しただけで、再び辺野古に基地を押しつけようとしているばかりか、この案は1966年に既にあった軍港建設計画そのままなのである(!)。新基地建設が本来「普天間基地移設」のためではなく、あくまで最新鋭の便利な軍港を建設するためであることが、いよいよ明白になったのだ。

  命の海、宝の海を守ろうという身を挺した十年越しの闘いは、日米両政府が新基地建設を断念して白紙撤回しない限り、決して終わることはない。これは基地反対運動ではなく、新基地建設阻止行動なのだから。沖縄に新たに作られた基地から飛び立つ軍用機が世界の子供達を殺戮する、そんなことをこれ以上許せるわけないではないか!
  「出来ることだけするのではない、しなきゃいけないことを出来るようにしてやって行くのが阻止行動。海上阻止行動に関わった人のほとんどが、実はカナヅチ。みんな船の免許を取って、泳ぐ練習、潜る練習をした。最後まで泳げなかった人もいる。泳げないのに、四メートルの海底に潜った。“頑張って下さい”という言葉は辺野古では禁句なの。こんなに頑張っているのに、もっと頑張れって言うの?あんたはなにもしないの?って。ここに来た人の多くは、頑張って下さいて言って帰って行ったの。“頑張って下さい”ってのは、私は頑張りませんっていう宣言。僕らが作ろうとしているのは、戦争のない世界。人類数万年の歴史の中で、まだ経験していないこと。何百年、何千年かかるかもしれない。でも、今日、まじめに真剣に一歩踏み出さないと、何万年経っても、そんな世界は出来ないわけだから。で、あなたは何をするの?」(平良夏芽/『Marines Go Home』パンフレットより)

  (※)ギャラクシー賞テレビ部門の入賞決定を受けて、一度再放送されている。リクエストを!

  以下、関連書籍。必読!
 ■沖縄 戦世 美ら海を守る/浅見裕子(写真集)
 ■辺野古 海のたたかい/浦島悦子(単行本)
 ■シマが揺れる〜沖縄・海辺のムラの物語/浦島悦子&石川真生(写真集)
 ■沖縄「戦後」ゼロ年/目取真俊(新書)