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春になったら/子どもの物語にあらず
  (2003年 チェチェン)
  監督: ティムール・オズダミール/ザーラ・イマーエワ
  英題: WHEN THE SPRING WILL COME
/NOT CHILDREN'S STORIES
  主要舞台: 旧ソ連邦圏
    VHS/DVD『春になったら』&『子どもの物語にあらず』
発売:通販あれこれ
通販詳細:www.rakuten.co.jp/arekore/573996/675292/

  「奴らはペストだ。殲滅しなければならない」(2004年2月プーチン大統領の発言)

  数百名もの死者を出す大惨事となった「北オセチア共和国・ベスラン学校占拠事件(2004年9月)」は、ボリス・エリツィンやウラジーミル・プーチンによる悪逆非道なコーカサス政策の帰結である。日本のマス・メディアは、例によって、犯行グループを残虐なテロリスト集団としかみない報道姿勢に終始し、ロシア政府の長年にわたるジェノサイドとすらいえる残忍な侵略行為を検証することなど金輪際ないといった態度だ。その思考の角度は、「9・11」やパレスチナなどに関わっての、大国中心の「テロ論」と何ら変わることのないものであった。
  もちろん、子供達の命を盾にするそのやり方は断じて許されるものではない。無辜の民間人を巻き込む、武力による抵抗手段は、現在イラクで頻発している「人質事件」同様、ブッシュやプーチンのような、報道機関を牛耳っている絶対権力者の側に利益を与えこそすれ、世界に共感の輪を広げることはない。連帯のない、世界に散らばる分断されたレジスタンス勢力の焦りは、ここにきて、勝者のない、ゴールの見えない地獄絵図の絶望的世界を加速させるばかりだ。
  しかしそれでも、これ以上、人為による子供達の受難があって良い訳はない。悲劇に暗澹として無気力に黙殺して良い訳がないのだ。我々一人一人に出来ること。それは、「世界は見てるぞ」とメッセージすることに他ならない。いかなる人々をも絶望の淵に孤立させない、という思いを繋げること。イラクで、アフガニスタンで、パレスチナで、チェチェンで、アチェで、西パプアで起こっていることの本質をしっかりと見極め、弾圧する側の所業を注視することによって、一人一人の市民が、少しでもその悪行をストップさせるきっかけになることぐらいは出来るはずなのだ。
  「子供を殺した責任は、もちろんチェチェン・ゲリラにあり、ロシア政府にある。しかし最も大きな責任は、これまでチェチェンの人々を見殺しにしてきた私達にある」(広河隆一)

  ロシアによるチェチェン侵略は、ピョートル大帝のカフカス侵攻(1712年)を皮切りに、ほぼ三十年から五十年おきに、現在に至るまで四百年間も続いており、その極めつけが、1994年12月から一年八か月続いた「第一次チェチェン戦争」、1999年9月から今に至る「第二次チェチェン戦争」なのである。石油利権の為といわれるこの戦争は、地球最後の植民地戦争でもある。
  人口百万人の内、推定二十万人もの市民がロシア軍によって殺され、その内の四分の一が子供であるという(ロシア軍による略奪、強姦、そして大量逮捕の末、拷問、裁判なしの処刑が日常化している)。チェチェン・ゲリラにしてみれば、「これまでチェチェンの子供が何人殺されようが、誰も見向きもしなかったではないか!」と、絶望の末に考えても当然ではないか。
  チェチェン・ゲリラによる(とされる)数々の「占拠事件」「爆破テロ」には奇妙な共通点がある。「事件発生後、容疑者としてチェチェン人が浮上し、チェチェン攻撃が強化され、何故か容疑者が戦闘で死亡して、捜査打ち切りなどになり、いつも結末がうやむやになる」(林克明)のだ。しかも数々の「占拠事件」で、ロシア軍の特殊部隊は、ゲリラのみならず多くの人質をも犠牲にする強行突入を行ない、凄惨な幕引きとなるのが常なのである。
  「9・11」以降、国連常任理事国であるロシアに対して沈黙する国際社会。「反テロ戦争」の名の下、アメリカ、イスラエル、ロシアのような大国が世界をいいように振り回すその裏には、もっととんでもない陰謀が暗躍しているような気すらするのだ。

  本DVDは、チェチェン難民の毋と息子が制作した二作品のカップリングだ。
  十八歳のティムール・オズダミールによる処女短篇『春になったら』(2003年)は、第二次チェチェン戦争下、子供達が描き残した絵を動画にしたアニメ作品。
  ロシア軍によって破壊されてゆく美しいチェチェンの町や村。逃げ込んだ地下壕で子供達は「戦争はいつ終わるの?」と毋親に問う。「春になったら」という毋の答えに、子供達は「平和になったらアイスクリームが食べたい」などと夢を思い描くのである。これは子供の頃のティムールの実話でもある。
  そして、ティムールの毋、映像作家のザーラ・イマーエワによる『子どもの物語にあらず』(2000年)は、チェチェン難民の子供達の証言をまとめたドキュメンタリー作品。家庭用ビデオカメラで記録された、四歳から十二歳までの十五人の子供達の証言は、壮絶な爆撃、家族の死、苦しい避難、恐怖、残虐非道なロシア軍の所業を否応なく浮き上がらせ、子供達の純粋な表情が語る平和への願いや夢は、観る者の胸に激しく迫る。
  例えばこんな子供の証言に我々大人はどう向き合えばいいのか。「子供はみんな戦争が嫌いです。でも大人は戦争が好きみたいね。子供が嫌いなのかな」「僕はロシア人の子供が嫌いだよ。大きくなったら人殺しするんだから。大きくなったら喧嘩ばっかりするんだ。そして飛行機でやって来るんだ。そんなロシア人の子供は殺しちゃうべきだと思うよ」
  映画の冒頭とラストに挿入された、証言者の少女ハシミスちゃん(七歳)の歌う唄は圧倒的だ。「私は世界中で綺麗な町を見てきたが、グローズヌイの町ほど素晴らしい町はない/これほど美しい花園はどこにもない/唄よ飛べ 、全ての山々を越えて飛べ!/唄よ、伝えておくれ、私達の町のことを!/グローズヌイの町の灯は我が家の幸せ/スンジャ川の川面に白波が砕ける/唄よ飛べ 、全ての山々を越えて飛べ!/唄よ、伝えておくれ、私達の町のことを!」(<唄よ飛べ!>歌詞和訳)
  ちなみに、チェチェンに残ったティムールの父、ザーラの夫は、第二次チェチェン戦争の時に戦死。現在ティムールは留学生としてここ日本(新潟)に滞在している(「ティムール・プロジェクト」[www.geocities.jp/t_project2004/first.html]) 。
  全人類必見!の本DVDの通信販売はこちらまで。[www.rakuten.co.jp/arekore/573996/675292]
  なお、チェチェンのことをもっと詳しく知りたい向きには、チェチェンを追い続けているジャーナリスト、林克明氏の著書『チェチェン・屈せざる人びと』(岩波書店)、『チェチェンで何が起こっているのか』(高文研)がお勧め。『DAYS JAPAN(2004年9月号)』の特集「反テロ戦争」にも、林氏の分かりやすいレポート「瓦礫となったチェチェンの街で」が掲載されている。

  「世界のホットスポットで苦しむ人々を伝えるイメージに、ステレオタイプとして難民と廃墟が挙げられます。そこで見逃されがちなのは、こうした破壊された家々の一つ一つに、打ち砕かれた運命が宿っていることです」「私達の痛みや悲しみが、遠く離れた場所にいられるみなさんにも、ご自分のものとして感じていただけることを願っています。それを共有して、私達を支援して下さることを願っています」「子供達の幸せのために、私達大人は団結しようではありませんか!」(ザーラ・イマーエワ)