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ノーマ・レイ
  (1979年 アメリカ)
  監督: マーティン・リット
  原題: NORMA RAE
  主要舞台: アメリカ
    20世紀FOX
価格(税抜): ¥1,980(税込み¥2,079)

  アメリカには、労働者の過半数の賛同があって初めて労働組合が企業と労使交渉を行なうことが出来る、という法律がある。労働者の30%の署名が集まった上で組合承認選挙が実施出来るのだが、仮にその選挙で過半数の支持が得られなければ、労働者は企業に対して労使交渉すら出来ないのである。さすがは超資本主義国家アメリカだ。力なき者は黙っていろ、ということだろう。
  1979年、アカデミー主演女優賞とカンヌ映画祭主演女優賞をW受賞(サリー・フィールド)した実に稀有なアメリカ映画『ノーマ・レイ』は、保守的な南部での労働組合運動を素朴に描いた、社会派「娯楽ドラマ」の秀作である。例によってアメリカ映画(六大映画企業作品)ならではの欠点、事象の単純化、ジェンダーのステロタイプ化など、鼻につくところもあるのだが、抑制の効いた演出、娯楽映画としての構成力、そして何よりもサリー・フィールドの好演が、本作を魅力ある映画にしている。
  『ノーマ・レイ』は、一人のシングル・マザーが、労働組合運動に関わることによって、人間的に成長を遂げてゆく、社会的自立への目覚めを描いた、積極的思考が痛快な底辺群像劇である。

  舞台は、保守的なアメリカ南部の田舎町にある OPヘンリー紡績工場。
  二児の毋であるシングル・マザーのノーマ・レイ(サリー・フィールド)は、その紡績工場で女工として働いている。長男は酒場の喧嘩で殺された最初の夫との間の子。長女は成りゆきで作った「父なし児」である。先夫を失ってからは、何かと男にだらしがない、セックスに奔放なノーマだ。
  ノーマの父バーノンと母リオナも同じ紡績工場で働いているのだが、この工場には組合もなく、工員達は劣悪な労働条件下で資本家に搾取されるがままの酷い状況にある。
  そんなある日、この町にルーベン・ワーショフスキー(ロン・リーブマン)というユダヤ系の男がやって来た。彼は、ニューヨークに本部をもつアメリカ紡績工員労働組合に所属しており、労働運動が立ち遅れているこの町の工場に、組合を組織する為にやって来た派遣オルグ員である。そして、町のモーテルに本拠を構え、毎朝出勤して来る工員にビラを配布し、工場からの不当待遇を訴え、組合の重要性を説くのであった。
  ソニーという男と再婚したノーマは、やがて、ルーベンとの親交や工場からの不当な圧力の中で労働者意識に目覚め、待遇改善を求め、全く興味のなかった組合運動に没入してゆく。不平を言う夫ソニーを尻目に、彼女とルーベンは運動を通して強い絆で結ばれ、昼夜を問わず組合運動に奔走するのであった。
  そしてノーマに決定的な転機が訪れる。彼女の父バーノンが苛酷な労働下で過労死してしまうのだ。労組潰しに躍起な工場側の圧力。諦観漂う工員達。そんなある日、孤立無援の彼女は、工場の機械に踊り上がり、「UNION」と大書きされたボードを工員達の前で高く掲げる。圧巻のシークェンスだ。
  ノーマは、一旦留置所にぶち込まれ、工場をクビになるものの、遂に実施された組合承認選挙では労組側が勝利。歓喜の瞬間だ。
  ラスト・シーン。ニューヨークへと帰るルーベンを、いつまでも見送るノーマの姿があった。

  一見、ルーベンという男の「教育」によって成長を遂げた無教養な田舎娘の物語かのような本作だが(本作に批判的な者はこの部分を強調する)、映画の本質は別のところにあるように思う。前半にある、ノーマの奔放なセックス観は、劇中に於いては「無教養な田舎娘」を強調する意味合いも含ませているが、それもまた彼女の持つ不屈のパワーや人生に対する誠実さの現れであるように思えるのだ。後半、彼女が留置所から釈放された夜、寝ている子供達を無理矢理起こし、写真を見せながら子供達に本当の父親を教えるシークェンスの力強さは、元来からある彼女の逞しさに通じているのではないか。
  確かにルーベンは、ノーマにとっての触媒ではあった。しかし、彼女は何も労働運動だけを闘ったのではない。元々彼女の人生そのものが闘いなのだ。ルーベンが現れても現れなくても、遅かれ早かれ、ノーマの「成長」は必然だったはずだ。

  「奇跡なんか生まれない/人間は毎日生きてゆく/奇跡なんか起こらない/人間はただ育ってく/川が流れてゆくように/そして時が過ぎてゆく/良いことが少しずつ増えて/悪いことがなくなってゆく/働く者の子に恵みを/冷たい風に晒されて/働く者の手に恵みを/汗にまみれて生きてゆく/川が流れてゆくように/そして時が過ぎてゆく/良いことが少しずつ増えて/悪いことがなくなってゆく」(ジェニファー・ウォーンズが歌う主題歌<流れゆくままに>)