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ケマダの戦い
  (1969年 イタリア=フランス)
  監督: ジッロ・ポンテコルヴォ
  原題: BURN !
  主要舞台: カリブ
    品番:OPSD-S127
価格:¥3,980(税込み¥4,179)
発売元:SPO
©1969 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
作品公開サイトURL:www.cinemart.co.jp

  アルジェリアの民族解放闘争を描いた『アルジェの戦い』に引き続き、ポンテコルヴォが着手した作品は、19世紀のポルトガル領ケマダでの反植民地闘争を描いた『ケマダの戦い』であった。
  カリブ海からベネズエラへと弧状に延びる小アンティル諸島に、「ポルトガル領ケマダ」という島は実在しないが、本作で描かれているテーマが歴史的普遍であるが故に、観る者は近代西欧列強の残忍非道な植民地政策に慄然とするのだ。当初本作は、スペイン領の反植民地闘争を描く予定であったが、制作過程でスペイン政府の猛烈な抗議に遭い、「ポルトガル領ケマダ」という島に舞台の設定は移されている。
  本作『ケマダの戦い』の大半が、(大英帝国の)侵略の尖兵役(主役マーロン・ブランド)を中心に進行するので、その狡猾で残忍な描写は、観る者に言語を絶する不快な憤りを与えるが、西欧列強の悪逆非道な「コロンブス以降」を知る手がかりとして、本作の提示する問いかけは重要である。

  舞台は1830年頃の、カリブ海に浮かぶポルトガル領ケマダ島。「ケマダ」とはポルトガル語で「野焼き」を意味し、16世紀にポルトガル人が先住民を大虐殺して、全島を焼き尽くしたことに由来する。住民は、アフリカから強制的に連れてこられた黒人奴隷と五千人の白人、そしてその混血達である。
  ウィリアム・ウォーカー(マーロン・ブランド)は、ポルトガル政府の独占を阻止する為にイギリス政府が派遣した海軍役人だ。狡猾な戦略家であるウォーカーは、大英帝国が手を汚さずに任務遂行するその謀略に、黒人奴隷が利用出来ると考える。ポルトガル政府に対する黒人奴隷の革命を演出する為に、蜂起の指導者になれそうな適任者を探し始めるのであった。
  こうしてウォーカーが見つけ出した「勇敢な奴隷」ホセ・ドロレス(エヴァリスト・マルケス)は、ウォーカーの指示のまま部下と共に銀行強盗を敢行。一方でウォーカーは、ポルトガル側にホセを密告し、犯罪者に仕立て上げるのであった。双方を内偵しながら、どちらをも焚き付けて、ウォーカーはポルトガル人入植者達に革命への加担を進言する。目的は勿論、大英帝国にとって都合のいい傀儡政権を作る為だ(こういった、卑劣な間諜行為は、近世以降、日本政府がアイヌに、合州国政府がネイティヴ・アメリカンに取った謀略を想起させる)。
  ウォーカーの煽動に引っ掛かった混血青年テディ・サンチェス(レナート・サルヴァトーリ)はポルトガル総督を暗殺し、黒人の一斉蜂起によりホセ達の革命は成功するのであった。一躍英雄になったホセだが、権力に興味を持てない彼は、大統領の座をテディに譲り、仕事を終えたウォーカーはイギリスへ帰る。そして1845年、サンチェス初代大統領の下、ケマダ共和国が誕生し、武装解除したホセは、自由になった奴隷達と共に山岳地帯へ身を潜めるのであった。
  帰国十年後、海軍を除名していたウォーカーは再びケマダに派遣される。イギリスの砂糖会社ロイヤル社の更なる利益拡大の為、また、白人傀儡政権とホセ達反乱軍(正しくは解放軍)の内紛が絶えないからである。
  次々と山岳部の村を焼き払う残忍非道なウォーカー。追い詰められるホセ達山岳ゲリラ。そして遂に、村民大虐殺の果てにホセは捕獲されるのであった。
  支配者白人の所行から多くを学んだホセは、傀儡軍の黒人達に諭すように言う。「炎で全ては破壊出来ない。常に希望は残る。絶えることはないのだ。白人が何をしようと、我々は屈しない。困難を乗り越え、また誰かが立ち上がる。そしてそれに続く者も現れるだろう。今に分かる。その時こそ白人は思い知るだろう。白人共は死の恐怖に追い立てられ、逃げまどうことになる。自らが島に放った炎に焼かれるのだ。唸り声が自由の叫びへと変わり、島の外まで響き渡るだろう」
  そしてホセは、連行する傀儡軍の黒人に語りかける。「与えられた自由は自由と呼べない。自由とは自分で勝ち取るもの。分かるか?(黙って首を振る兵士に向かって)いつか分かる」
  絞首刑の寸前、ウォーカーはこっそりとホセに逃亡を勧めるが、もはやホセの魂は自由だ。首を縦に振る訳がない。理解出来ないウォーカー。
  処刑台に向かうホセはウォーカーに言う。「イングリッシュ!  あなたは言った。白人が築いた文明だと。だが、そんな文明は今に終わる!」

  人類史には数々の悲劇があるが、白人による「コロンブス以降」の悲劇、南北アメリカ大陸の先住民(及び奴隷アフリカ人)の悲劇ほど大規模なものは、他に類をみない。民族圧殺されたネイティヴの側の視点に立てば、コロンブスやマゼランに代表されるヨーロッパ人によるアメリカ大陸「発見」は、人類史上最大の犯罪の幕開けでしかない。
  大航海時代以来の巨大犯罪、民族ジェノサイドをどう省みるのかは、欧米人自身の問題であるが、ことを日本に置き換えてみた時に、近代日本政府の先住民族アイヌ、沖縄に対する非道な侵略が想起されてしかるべきだ。
  『ケマダの戦い』に照らし合わすと、本来西欧人にとって「ホセの側」であるはずの「日本人」は、自らすすんで侵略する側の「ウォーカーの側」に立ち、未だにその意識のまま、大手を振って厚顔無恥を世界にさらけ出し続けている。
  ちなみに、この「大野蛮人」ウィリアム・ウォーカーを演じたマーロン・ブランドは、映画界の先住民族に対する取り扱いが不当だとして、『ゴッドファーザー』のアカデミー賞男優賞を拒否している。こんな俳優も日本には見当たらない。