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  (1954年 イタリア)
  監督: フェデリコ・フェリーニ
  原題: LA STRADA
  主要舞台: イタリア
    商品番号:IVCF-2005
価格:,675(税込)
発売元:アイ・ヴィ・シー
販売元:ハピネット・ピクチャーズ
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  若きフェリーニの名を世界に轟かせた、これぞまさしく世紀の名画。
  寒村から口べらしの為に売られた知的障害者ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)と、粗暴で狡猾な怪力業の大道芸人ザンパノ(アンソニー・クイン)の二人が織り成す、先駆的ロード・ムービーの大傑作。フェリーニが常にこだわり続けた、底辺群像ものの決定版である。
  「近代人としての私達の悩みは孤独感です。そしてこれは私達の存在の奥底からやってくるのです。どのような祝典も、政治的交響曲もそこから逃れようと望むことは出来ません。ただ人間と人間の間でだけ、この孤独を絶つことが出来るし、ただ一人一人の人間を通してだけ、一種のメッセージを伝えることが出来て、一人の人間ともう一人の人間との深遠な絆を彼らに理解させ、いや、発見させることが出来るのです。(中略)『道』は映画が利用しうる手段によって、このようなことを表現しています」(フェリーニ)

  純粋無垢な優しい心の持ち主ジェルソミーナは、貧困に喘ぐ家族の為に、大道芸人ザンパノの助手として、生まれ育った村を初めて後にする。幌付きオート三輪の荷台がねぐらだ。
  旅回りの曲芸師ザンパノは「知恵遅れ」のジェルソミーナを酷使しながらも、二人の「夫婦芸」がはまったこともあり、旅中奇妙な愛着の中、決して彼女を手放そうとはしない。
  小さなサーカス一座と契約を交わした二人は、綱渡り芸人の「キ印」と出会う。しかし、ことごとくザンパノを茶化すキ印に、遂に怒りが爆発し、ザンパノはキ印をナイフで追い掛けまわした挙げ句、警察に捕まる。
  自分は何の役にも立たない女だと嘆くジェルソミーナを優しくキ印が励ます。
  「小石だって役に立っている。君だって、きっと誰かの役に立っている。この小石が無益だと言うのなら、すべてが無益だ」。映画史に燦然と輝く名言!
  結局、一座にもキ印にも付いて行かずに、ザンパノと旅を続けるジェルソミーナ。
  しかし、遂に事件は起きた。偶然再会したキ印をザンパノはいきおい殴り殺してしまうのだ。
  以降、精神に異常をきたしたジェルソミーナは旅芸人として使いものにならない。
  ある積雪の晴れた日、彼女が寝息を立てたとみるや、見切りをつけ、一人で旅立つザンパノであった。
  数年後ザンパノは、海の見える町で偶然「あのメロディー」を耳にする。そう、ジェルソミーナが頻繁に口ずさみ、キ印がフィドルで奏でた「あのメロディー」を。そして、口ずさんでいた女の話から、ジェルソミーナが死んだということを知らされたザンパノは、一人海岸の砂浜に伏して嗚咽するのであった。
  誰もが驚く圧倒的エンディング。冷酷で無反省なザンパノ、観る者が最後まで感情移入出来なかったザンパノが、このシークェンスでは孤独への恐れに崩れ落ちる、一人の魅力的な男に映るのだ。

  ロッセリーニの助監督から始まり(『無防備都市』『戦火のかなた』)、ネオ・レアリズモの系譜上にいたフェリーニであったが、本作の登場は、写実的描写の中に哀感溢れる詩情を漂わせ、より魂の深淵に緊迫する、明らかに「新しい映画」の誕生を意味していた。神性と獣性、母性と父性、貪欲と無垢、それらの混濁した相互依存にこそ、純粋な魂の住処はあるというものだ。
  フェリーニはこの映画を実生活での愛妻ジュリエッタ・マシーナに捧げている。彼女のキャラクターがなかったらジェルソミーナもありえなかったであろう。そして、アンソニー・クインのザンパノも見事過ぎる配置だ。「妻のジュリエッタには、自然に夢を呼び起こす天分がある。そしてその一種の覚めた夢は、まるで彼女自身の意識の外で生じているように見える。彼女が道化師のような身ぶりで私との関係の中に具体化しているものは、純真さへのノスタルジアである」(フェリーニ)
  フェリーニは九歳の時、サーカス団へ入りたいが為に神学校を抜け出し、連れ戻される時の孤独なイメージを白い道に反映させた、と告白している。彼はきっと死ぬまで(1993年)その「道」を逡巡しながら歩き続けたのであろう。フェリーニ自身、本作を最も愛着のある一本として挙げている。
  あの曲<ジェルソミーナのテーマ>(作曲ニーノ・ロータ)が聞こえて来るだけで、誰もがジェルソミーナの宇宙へ引きずり込まれるのだ。
  俺の自己最多鑑賞映画でもある。

  「私の好きな映画『道』でのフェリーニは私にとって神であった。これはネオ・レアリズモ作品という以上に力強い映画だ。『道』で、フェリーニは人間の喜びと悲しみの偉大な叙情詩、叙事詩を作り上げた」(アッバス・キアロスタミ)