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アルジェの戦い
  (1966年 イタリア=アルジェリア)
  監督: ジッロ・ポンテコルヴォ
  原題: LA BATTAGLIA DI ALGERI
(THE BATTLE OF ALGIERS)
  主要舞台: アルジェリア
    株式会社 アイ・ヴィー・シー
「アルジェの戦い」IVCF-222
定価¥3,800 好評発売中

  宗主国フランスの横暴な弾圧に抵抗する民族解放闘争の中、1954年11月1日、首都アルジェのカスバ(アラブ人地区。デュヴィヴィエ監督作『望郷』の舞台でもあるスラム街)でアルジェリア民族解放戦線(FNL)が決死の蜂起、アルジェリア独立戦争が勃発した。暴動の波はアルジェリア全域からヨーロッパの街頭にまで及び、抵抗の火は至る所で爆弾闘争へと発展していった(桁違いの武力を持ってして隷属させようとする側は、いつの世もこれを「テロリズム」と呼ぶ)。

  1957年1月、仏軍が訊問と言う名の残忍な拷問により、FNL参謀のアリ・ラ・ポワントの居場所を吐かせるシーンから映画は始まる。
  時はさかのぼり1954年。博徒アリ・ラ・ポワントは獄中、抵抗運動活動家のギロチン刑執行を目撃し、釈放された五か月後、FNLのゲリラ活動に身を投じる。
  カスバに配られた民族解放戦線の公報一号目である。「アルジェリアの同胞よ。130年にわたる惨めな植民地支配から脱却し、独立を求めて戦う時がやってきた。フランス当局が我が国民の平等の権利を認めるのなら、我々も流血を避け、名誉ある話し合いを求める。アルジェリア国民よ、自由の為に共に戦おう!」
  ヨーロッパ人地区を容赦なく襲う爆弾。フランス警察による陰謀、連行、拷問。
  ゼネストの時、子供が仏軍の街宣マイクを奪い、「同胞に告ぐ。アルジェリアの自由の為に勇気を出して戦おう。奴らの甘言に耳を貸すな。アルジェリア万歳!」と呼びかけ、カスバの全住民が叫ぶシークエンスは感動的だ。
  買い物篭に爆弾を仕掛けてフランス人を殺害する指揮をした、ゲリラの参謀ベン・ミディが逮捕されて会見で言う。「ナパーム弾で何千倍もの村民を殺す方がもっと卑怯だ。我々に爆撃機をくれるなら、こちらの爆弾を差し出そう」いつの世にもある、殺す側(大国による国家テロは容認する側)の論理でしかない脆弱な「テロ論」は、この有名なセリフの前では無力な空論に過ぎない。
  1957年1月、鎮圧の為に本国から送り込まれた仏軍空挺師団のマシュー・フィリップ中佐は元反ナチス活動家。アリ・ラ・ポワント、サアリ・カデール等参謀達を次々に殲滅してゆく。元レジスタンスの闘士やナチス収容所生存者達が、「平和」の名の下、弾圧の先頭に立つこの皮肉。本作を単なるレジスタンス映画のコンテンツでは括れない「しんどさ」がここにあるのだ。
  FNLの指導者達は処刑された。しかし、三年後の1960年12月11日、カスバの民衆は一斉蜂起し、シーツやボロ布で作られた何千もの三日月と星をあしらった旗がカスバにはためく。街を覆う八万の叫び声が夜空を射る。最早どんな武力も、解放を希求する魂を鎮火することは出来ない。
  そして、その二年後の1962年7月5日。エビアン協定によって、遂に132年間に及ぶ過酷な植民地支配は終わり、アルジェリア民主人民共和国が誕生したのであった。

  本作は、約十年間に及ぶ独立運動の激戦をドキュメンタリー・タッチの冷徹なリアリズムで再現、五年がかりで製作された執念の大作である。記録映像を一切使わず、証言、記録、写真をもとに、劇映画としての再現に努めている。
  八万人のアルジェ市民が積極的に参加し、百三十八人の脇役も二、三人を除いてほぼ素人で、主人公の闘士アリ・ラ・ポワント役のブラヒム・ハジャックもアルジェ近郊に住む漁民で、実際の地下活動家であった。
  また、ジャファルを演じているヤセフ・サーディも実際の活動家の一人で、同志を仏軍に殺害されている。現在はカスバ・フィルムの社長として全財産を投げうち、本作のプロデューサーも努めている。「私は機関銃をカメラに取り替えたのです。当時を再現し、あの感動を再び呼び覚ますことによって、ある国家や国民を審判するのではなく、戦争や暴力の恐ろしさを伝える客観的な映画を作りたいと念願していたのです」
  1966年、ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞時、余りに反仏的であるとの理由から、フランス代表団が抗議の為に退場したが、唯一人退席しなかったのがフランソワ・トリュフォーであった。
  それまで「西欧」のものであった映画をアルジェリアの側に引き寄せ、決して爆弾闘争を英雄的に美化したりはしない恐るべき客観性に、本作の永遠性はある。
  2003年夏、なんとイラク侵略を続けるペンタゴン(米国防総省)が本作『アルジェの戦い』の鑑賞会を開き、仏軍の軍事行動を検証している。この映画の強靭な普遍性を物語る凄まじいエピソードだ。